江戸幕府の代官を世襲した旧韮山町(伊豆の国市)の江川家で造られ、4年前に「復活」した酒がある。 「江川酒(えがわざけ)」。
今年も「世直し大明神」と敬われた英龍(坦庵公)の誕生日にあたる13日に発売された。原料や製造法も残っていない「幻の銘酒」造りに、地酒愛好家グループが挑戦した。酒米を栽培し、田植えや仕込みの手伝いに汗を流した結晶だ。
江川酒は、戦国時代から江戸初期にかけて醸造された。北条早雲が命名し、田舎酒の五大銘酒として徳川家康にも献上されたと伝わる。
「復活」に取り組んだのは「江川酒を造る会」。
坦庵公生誕200年を記念して、2001年、市内を中心にした日本酒愛好家ら約120人が集まった。
ただ、製造法などの資料は江川家にも残っていない。酒店を営む会長の渡辺和夫さん(57)は「現代に通じるいい酒を造ろうを合言葉に、会員が愛情込めて作業に精を出した」と話す。
旧韮山町内に借りた30アールの田んぼで、醸造米「山田錦」を栽培。
会員らが田植えから稲刈りまでこなし、伊豆市年川の蔵元「万大醸造」(佐藤守令社長)で仕込んだ。
昨年の田植えには、東京から訪れた3家族を含めて約50人が参加。
酒の仕込みには、約30人で蒸した米を運んだり、タンクに入れたりする作業も手伝った。
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